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이용수
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本稿は、大江健三郎の初期短篇作品「鳥」(1958)が、カフカ「変身」(1915)の影響によって創られた作品であることを明らかにすることを目的とする。この試みによって、自明のこととされていながらいまだにその全貌が明らかにされていない、大江健三郎と実存主義との関係を究明する作業に、一石を投じたいと思う。比較の根拠として、大江がエッセイ「審判ーまじめな審判と不まじめな審判」において、カフカの小説のイメージが喚起する力に富んでいることを指摘していること、また、マックス・ブロート刊行の「変身」の挿絵に触れていることを確認した。作品の比較においては、類似点または変換された要素と、相違点または捨象された要素とに分けて考察した。主な類似点としては、次の四つを指摘した。書出しが主人公の異様な状況、つまり動物を用いた退行から書き起こされていることと三部構成であることがまず一点、主人公の視点にそって語られていることが次の一点、そして主人公の動物への退行が現実問題からの解放という意義をもつこと、退行した主人公に対して家族による追放と監禁が行われること、の四つである。相違点としては、退行の原因、超現実性の有無、家族の変身の様子、の三つを明らかにした。大江は、退行を描くのに動物を用いるという手法と、家族によって追放と監禁が行われるという枠組みは借用したが、「変身」の核心的な主題である、労働による自己疎外と家族の搾取、という要素は廃棄した。そして、主題をもっぱら他者との疎通の不可能性、つまりコミュニケーションの問題に一元化し、写実主義の枠組みの中で再構築したといえる。その過程で、カフカの解釈した父権的なキリスト教の要素は捨象し、息子を子宮の中に押し込むよううなグロテスクな母性的処罰に変わっていることも明らかにした。
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